いつか訪れる「さよなら」のために


わたしが消えていく瞬間

だれもが遠くの空に向かってあるき続けているのだろう

わたしは何食わぬ顔で忘れられることに「しめしめ」とつぶやきながら

独居老人となっていく

そしていつも偉そうに人々を見下ろしている君は

やっぱりそこでいつも眠っている


こんなところへやってきて

せまい家の中のルールを守りながら君は

そして今も生きていることを

わたしに思い出させてくれる


あなたをこんな狭いところに閉じ込めてしまったね

いつかしらない誰かがたずねてきて

きっと君をいろいろなところへ

連れだしてくれるかもしれない


わたしが消えていった後も

君がしあわせでありますように


足りなかったところも、すぎるほどの想いも

それはそれで

私なりの精一杯だったと笑い飛ばして

誰も連れていけないわたしには

おいてゆく者たちの気持ちが

今ようやく分かるような気がして


「あしたわたしは風になる」          


今日もささやかなあかりのした

砂時計のように時間だけが        

つらつらと流れ落ち

すべての砂が風に舞ってきえていく


でも

このいとなみは消えることを知らず

あさになると必ず

あたらしい光がさしこんでくるから














星空

 

つめたい空気がとがったように

凍った冬の星の夜

誰もが一人ぼっちでいきている

あなたのいないこの部屋で


誰も隣りにいる人のことなんか

心配したりしないのに


遠くの空のした

あなたはどうしているのだろう

ふと そんなふうに考える


「また一緒になろうね」


約束もしないまま

驚くような速度で消えてしまったあなた


こんな夜は

とどまった空気をぬって

ビー玉のような想いが空にまい上がって

星たちがキラキラとわらいかける

星たちがキラキラと




あいたくて


あいたくてあいたくて

君は夢の中

スーパー予知能力であらわれて
何やかやと買ってきたり
おこったり笑ったり
黙って応援してくれてたり
あんなこともそんなことも
なんだか懐かしく感じられるようになったよ

生きていくには
そんなにたくさんの荷物はいらないから
かるく生きてみる方法もちょっとだけうまくなった

だけどきょうは
あいたくて
あいたくて

まだすこし余裕が残っているんだけど
どこにかたづけてあるのかわからない
なにか大切なもの

横にいると
うるさくて うるさくて
あっちに行っていいよってくらいの距離かげんて
だけどそれがここちよい
いい距離かげんで
毎日、楽しかったね

そんな秋晴れのあの日
君は空気を割るように
僕をひとりぼっちににしてしまったんだ

空気が少しずつ冷えていく
そんなよくはれた秋の日に
君が居ないことに
とっくになれてしまった僕だけど

あいたくてあいたくて
ただ哀しくてあいたくて
なんだか何もかもがかすんでみえる

きょうは君に
あいたくて
あいたくて

ま、そんな日もある

ひとりではないのに
ひとりなのかなぁ